「椅子の巨匠」と呼ばれるハンス・J・ウェグナー。その椅子が今も世界中で愛されるのは、美しさが使い心地と職人の技に裏打ちされているからです。
家具職人から出発したデザイナー
ウェグナーは 1914 年、デンマーク南部の町トゥナーに生まれました。10 代で家具職人の修業を始め、木の性質や組み方を手で覚えたことが、のちのデザインの土台になります。
その後コペンハーゲンで学び、建築家アルネ・ヤコブセンらとともにオーフス市庁舎の家具を手がけるなど、早くから才能を発揮しました。生涯で 500 脚以上の椅子をデザインしたと言われています。
伝統を学び、そぎ落とす
ウェグナーの代表作の多くは、古い椅子を研究することから生まれました。中国・明代の椅子に着想を得た「チャイニーズチェア」の連作は、やがて Y 字の背もたれが印象的な「Y チェア(CH24)」へとつながります。
装飾を足すのではなく、構造そのものを美しく見せること。座る人の体を受け止める曲線と、無駄のない組み方。その考え方は、1949 年に発表された「ザ・チェア」に結晶し、のちにアメリカ大統領選のテレビ討論で使われたことでも知られています。
デンマーク近代家具を支えた職人たち
ウェグナーのデザインは、カール・ハンセン&サン、ヨハネス・ハンセン、ゲタマ、RY モブラーといった工房やメーカーが、確かな技術で形にしてきました。デザイナーと職人が近い距離で試作を重ねたことが、デンマーク近代家具の質の高さを支えています。
同じ時代には、友人でもあったボーエ・モーエンセンや、フィン・ユール、アルネ・ヤコブセンらが活躍し、デンマークの家具は世界に知られるようになりました。
ヴィンテージで出会う楽しみ
ヴィンテージのウェグナー作品は、長い年月を経たチークやオークの色、座面のペーパーコードや革の風合いに、新品にはない味わいがあります。
購入するときは、製造したメーカーの刻印やラベル、座面の状態(張り替えの有無)、脚のぐらつきを確かめましょう。気になる点は、ショップに遠慮なく尋ねてみてください。